【第4回】【ロジカルシンキングの鍛え方】なぜ?を深掘りする:So What? / Why So?

第1~3回でも説明したように、現代においては、情報の真偽を見極め、本質を理解する力はますます重要になっています。目の前の事象をただ受け入れるだけでなく、「なぜそうなるのか?」「だから何が言えるのか?」と深く掘り下げる思考こそが、ロジカルシンキングの中核を成すスキルです。

本記事では、この「深掘り力」を鍛えるための強力な思考ツールである「So What?(だから何?)」と「Why So?(なぜそうなるの?)」について、その概念から実践的な鍛え方までを解説していきたいと思います。

目次

1. 「So What? / Why So?」とは何か? ロジカルシンキングの核となる問い

「So What?(だから何?)」と「Why So?(なぜそうなるの?)」は、ロジカルシンキングにおける思考の深掘りを促す、相互補完的な問いです。

So What? (だから何?)

「So What?」とは、提示された情報やデータ、あるいは目の前の事象に対して「だから何が言えるのか?」「それで、結局どういう意味があるのか?」「次に何をすべきか?」と問いかける思考法です。

目的

提示された情報を単なる事実として受け止めるのではなく、その情報から「意味」「示唆」「行動」を引き出すことです。情報の「価値化」と「要約」に繋がります。

「先月の売上が前月比10%減少しました。」

「So What?」 → 「このままでは目標達成が困難になる。具体的な対策を早急に講じる必要がある。」

「このグラフは右肩上がりです。」

「So What?」 → 「成長傾向にあることがわかるので、この施策をさらに強化すべきだ。」

Why So? (なぜそうなるの?)

「Why So?」とは、目の前の事象や結論に対して「なぜそうなっているのか?」「原因は何なのか?」「その根拠は何か?」と問いかける思考法です。

目的

事象の背景にある原因や理由、メカニズムを深く掘り下げ、本質的な問題を発見したり、結論の妥当性を検証したりすることです。

v例

「先月の売上が前月比10%減少しました。」

「Why So?」 → 「なぜ?」「競合他社の新製品投入が影響しているのではないか?」「広告費を削減したためではないか?」

「この施策は効果がない。」

「Why So?」 → 「なぜ?」「ターゲット層に響いていないのか?」「実施方法に問題があったのか?」

相互補完の関係性

「So What?」と「Why So?」は、あたかも思考の「往復運動」のように機能します。

  • ある事実から「So What?」で導き出された結論や示唆を、さらに「Why So?」でその根拠や原因を深掘りする。
  • 「Why So?」で原因を特定した後、その原因に対して「So What?」で「では、どうすればよいのか?」という次の行動を導き出す。

このサイクルを繰り返すことで、思考はより深く、より論理的に、そしてより実用的なものへと洗練されていきます。

2. なぜ「So What? / Why So?」が重要なのか? 深掘り思考のメリット

この二つの問いを習慣化することのメリットを見ていきましょう。

情報の質の向上

表面的な情報に惑わされず、その裏にある本質的な意味や意図を見抜くことができます。これにより、情報過多の時代でも本当に必要な情報だけを掴み取ることが可能になります。

問題解決能力の向上

目の前の現象だけでなく、その根本原因を特定できるようになります。「Why So?」を繰り返すことで、真の課題に辿り着き、効果的で持続可能な解決策を立案できます。

コミュニケーション能力の向上

「So What?」で相手に伝えたい結論や要点を明確にし、「Why So?」でその根拠や背景を論理的に説明できます。これにより、説得力が高まり、相手の理解を深めることができます。

意思決定の質の向上

感情や経験だけでなく、論理的な根拠に基づいた判断を下せるようになります。多角的に物事を捉え、リスクと機会を正確に評価することで、最適な選択へと導きます。

自己成長と学習効率の向上

受け身ではなく能動的に思考する習慣がつき、あらゆる経験から深く学ぶことができます。知的好奇心が刺激され、知的な深みが増します。

3. 「So What? / Why So?」を鍛える実践的な方法

具体的なトレーニング方法を日常生活に取り入れて、思考力を磨いていくにはどうすべきなのか説明していきます。

日常のあらゆる情報に問いかける習慣をつける

まずは意識的に「So What?」「Why So?」と問いかける習慣をつけることから始めましょう。

ニュース記事を読むとき

「この出来事の背景には何があるのか? (Why So?)」

「この情報が私や社会にどんな影響を与えるのか? (So What?)」

会議での発言を聞くとき

「この発言の意図は何だろう? (Why So?)」

「この情報から、私たちにどんな行動が求められるだろう? (So What?)」

自分の行動を振り返るとき

「なぜ私は昨日、あの選択をしたのだろう? (Why So?)」

「その結果、今日どんな影響が出ているのだろう? (So What?)」

5回の「Why?」 (Why Five Times) を実践する

トヨタ生産方式で有名な「なぜなぜ5回」は、「Why So?」を深掘りする最も効果的な手法の一つです。一つの問題に対して「なぜ?」を最低でも5回繰り返すことで、真の原因に辿り着くことを目指します。

例:顧客からのクレーム「〇〇のサービスが使いにくい」

1. なぜ使いにくいのか? → A機能の操作が複雑だから。

2. なぜA機能の操作が複雑なのか? → ユーザーインターフェース (UI) が直感的ではないから。

3. なぜUIが直感的ではないのか? → 設計時にユーザーテストを十分に行わなかったから。

4. なぜユーザーテストを十分に行わなかったのか? → 開発スケジュールがタイトで、テスト工程が省略されたから。

5. なぜ開発スケジュールがタイトだったのか? → 計画段階での見積もりが甘く、無理な納期設定がされたから。

So What? →「サービスの使いにくさ」の根本原因は「計画段階での見積もりと無理な納期設定」にあると判明。今後のプロジェクト管理体制を見直す必要がある。

MECE (ミーシー) を意識する

「Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive」の略で、「漏れなく、ダブりなく」という意味です。「Why So?」で原因を分析したり、「So What?」で打ち手を検討したりする際に、MECEの視点を持つことで、思考の抜け漏れを防ぎ、より網羅的かつ論理的な結論を導き出すことができます。

PREP法でアウトプットする習慣をつける

思考したことを効果的に伝えるためのフレームワークが「PREP法」です。

  • Point (結論)
  • Reason (理由)
  • Example (具体例)
  • Point (再度結論)

「So What?」で導き出した結論 (P) を、「Why So?」で深掘りした理由 (R) で説明し、具体例 (E) で補強することで、説得力のあるアウトプットが可能です。これを日常の報告やプレゼンで意識的に使うことで、思考と表現が同時に鍛えられます。

議論やディベートに積極的に参加する

他者との意見交換は、自分の思考の偏りに気づき、新たな視点を取り入れる絶好の機会です。

  • 相手の意見に対して「Why So? (なぜそう考えるのか?)」と問いかけ、その背景を理解しようと努める。
  • 自分の意見を述べた後、「So What? (で、結局何が言いたいのか?)」を明確にするよう意識する。

4. よくある落とし穴と注意点

「So What? / Why So?」は強力なツールですが、使い方によっては逆効果になることもあります。

問い詰める姿勢にならない

相手を試すような質問や、尋問のような問いかけ方は避けましょう。あくまで建設的な議論や理解を深めるためのツールであることを忘れないでください。

完璧主義になりすぎない

全ての事柄において5回のWhy?を徹底する必要はありません。状況に応じて深掘りの度合いを調整することが重要です。

感情や感覚も尊重する

ロジカルシンキングは非常に有効ですが、人間の行動や意思決定には感情や直感が深く関わっています。論理だけで割り切れない部分も存在することを理解し、バランスを取ることが大切です。

5. まとめ:日常の「なぜ?」があなたを成長させる

「So What? / Why So?」は、一見単純な問いかけに見えますが、その思考プロセスを習慣化することで、あなたの情報処理能力、問題解決能力、そしてコミュニケーション能力は飛躍的に向上するはずです。

ビジネスではもちろんのこと、日々の生活におけるあらゆる意思決定や人間関係においても、この「深掘り力」は強力な武器となるでしょう。

今日から、目の前の事象に対して「だから何?」「なぜそうなるの?」と問いかける習慣を始めてみませんか?あなたの思考が深まるにつれて、見えてくる世界は間違いなく変わっていくはずです。

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