【第5回】【ロジカルシンキングの鍛え方】問題解決の地図を描く:ロジックツリー入門

第5回目で紹介するのは、ロジカルシンキングの強力な武器である「ロジックツリー」です。ロジックツリーは、問題解決のための地図を描くように、複雑な問題を体系的に整理し、原因や解決策を網羅的に洗い出すための思考ツールです。

目次

ロジックツリーとは?問題解決の羅針盤

ロジックツリーとは、あるひとつの事柄(問題、目標、テーマなど)を、その構成要素に分解し、さらにそれらを下位要素へと枝分かれさせていくことで、全体像をツリー状に可視化する思考ツールです。

ロジックツリーの目的

ロジックツリーを作成する主な目的は以下の通りです。

  • 問題の全体像を把握する
  • 根本原因を特定する
  • 解決策を網羅的に洗い出す
  • 思考を整理し共有する

ロジックツリーの種類と使い分け

ロジックツリーにはいくつかの種類があり、目的に応じて使い分けることで、より効果的に思考を進めることができます。

1. WHYツリー(原因追求型)

目的

ある問題や事象が「なぜ起きているのか?」その根本的な原因を深掘りしていく際に使用します。

構造

「〇〇が起きたのはなぜか?」という問いを繰り返し、原因を掘り下げていきます。

活用シーン

  • 売上が落ちている原因分析
  • 顧客満足度が低い原因の究明
  • 特定のトラブルが頻発する根本原因の特定

2. WHATツリー(要素分解型)

目的

ある概念や事柄を「何で構成されているのか?」その要素を分解し、全体像を把握する際に使用します。

構造

「〇〇は何から構成されているか?」という問いを繰り返し、要素を分解していきます。

活用シーン

  • 新規事業の要素分解(商品、顧客、チャネル、収益モデルなど)
  • 顧客満足度を構成する要素の洗い出し
  • 組織の機能や役割の整理

3. HOWツリー(解決策検討型)

目的

特定の目標を「どのように達成するか?」「どんな解決策があるか?」その具体的な手段や施策を検討する際に使用します。

構造

「〇〇を達成するにはどうすれば良いか?」という問いを繰り返し、具体的な行動レベルまで落とし込んでいきます。

活用シーン

  • 売上目標を達成するための施策検討
  • コスト削減の具体策立案
  • 業務効率化の方法の洗い出し

これらのツリーは単独で使うだけでなく、例えばWHYツリーで原因を特定した後、その原因に対する解決策をHOWツリーで検討するなど、組み合わせて活用することも非常に有効です。

ロジックツリー作成の基本ステップ

ステップ1:問題を明確化する

何が問題なのか、何を明らかにしたいのかを具体的に設定します。漠然とした表現ではなく、誰が、何を、いつまでに、どうしたいのかを明確にすることで、ツリーの出発点がブレなくなります。

例:「売上が低い」ではなく「〇〇製品の月間売上が前年比20%減」のように、数値や期間を明確にしましょう。

ステップ2:一番上の階層を設定する(テーマ)

ステップ1で明確にした問題やテーマを、ツリーの一番上に配置します。これがロジックツリーの「幹」となります。

例:「〇〇製品の月間売上20%減の原因は何か?」

ステップ3:MECE(ミーシー)を意識して分解する

ロジックツリー作成において最も重要な概念がMECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)です。テーマを最初の「枝」に分解する際、このMECEを意識することで、思考の抜け漏れや重複を防ぎ、論理的な構造を構築できます。

ステップ4:深掘りを続ける(3階層が目安)

分解した各要素に対し、「なぜ?」「何から?」「どうすれば?」といった問いを繰り返し、さらに下位の要素へと分解していきます。一般的に、3~4階層程度まで掘り下げると、具体的なアクションに繋がるレベルに到達しやすいと言われています。(それ以上深掘りすると複雑になりすぎる場合があります)

分解を止めるタイミングは、「これ以上分解しても意味がない、または具体的なアクションに繋がらない」と感じた時です。

ステップ5:構造を確認し、必要に応じて修正する

ツリー全体を見渡し、論理的な飛躍がないか、MECEが保たれているかを確認します。もし不自然な点や、より良い分解方法が見つかった場合は、ためらわずに修正しましょう。ロジックツリーは一度作って終わりではなく、思考を深める過程で改善していくものです。

ロジックツリー活用のポイントと注意点

ロジックツリーは非常に強力なツールですが、より効果的に活用するためのポイントと注意点があります。

完璧を目指さない

まずはざっくりとでも良いので、書き出してみることが重要です。完璧なMECEを目指しすぎて、思考が止まってしまうのは避けましょう。

柔軟に修正する

作成途中や、分析を進める中で新たな視点や情報が見つかれば、ためらわずにツリーを修正しましょう。ロジックツリーは生き物です。

一人で抱え込まない

複数人でロジックツリーを作成すると、様々な視点からMECE度を高め、より網羅的で深い分析が可能です。チームでのブレインストーミングにも最適です。

最近ですとChatGPTやGemini等のAIの活用も有効です。ロジックツリーの作成に限らず、アイデアの壁打ち、思考の整理など1人しかいないときに疑似的に複数人で進めている形を再現できます。

具体的な行動に繋げる

ロジックツリーはあくまで「道具」です。最終的な目的は、ツリーから導き出された原因に対して、具体的な解決策を実行し、問題を解決することです。ツリーを作って満足するのではなく、次のアクションへと繋げましょう。

深掘りしすぎない

あまりにも枝分かれさせすぎると、ツリー自体が複雑になり、本質が見えにくくなります。適切な深さで止め、必要に応じて別のツリーを立てるなどの工夫も必要です。

まとめ

ロジックツリーは、複雑な問題を体系的に整理し、根本原因の特定から具体的な解決策の立案までをサポートする、強力なロジカルシンキングツールです。

日々の業務やプライベートで直面する様々な問題に対し、ぜひロジックツリーを活用してみてください。繰り返すことで、あなたの論理的思考力は確実に鍛えられ、どんな複雑な問題も解決へと導く「問題解決の地図」を描けるようになるはずです。

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