第7回の本記事ではロジカルシンキングの、具体的な実践手法である「ピラミッドストラクチャー」について学んでいきます。自分の主張と根拠を明確にし、相手を納得してもらえる伝え方を学んでいきましょう。
ピラミッドストラクチャーの必要性
「話が伝わらない」と感じてしまうときはありませんか?その主な原因は、以下の点にあることが多いです。
結論が不明確
最初に何を伝えたいのかが曖昧で、聞き手が全体像を把握できない
根拠が不明瞭
主張を裏付ける具体的な理由やデータが示されていない、あるいは薄い
論理が飛躍している
結論と根拠のつながりが分かりにくく、話の筋道が見えない
情報が整理されていない
伝えたい情報が羅列されており、話の構造が不明
これらの課題を解決するとともにコミュニケーション能力を飛躍的に向上させるのが、「ピラミッドストラクチャー」です。
説得力を飛躍させる「ピラミッドストラクチャー」
ピラミッドストラクチャーとは、コミュニケーションにおいて非常に有効な論理構成のフレームワークです。その名の通り、結論を頂点に据え、その下にそれを支える複数の根拠や理由が階層的に配置される形をしています。コンサルティングファームで広く用いられる手法であり、その説得力の高さから多くのビジネスパーソンが活用しています。
ピラミッドストラクチャーが説得力を高める理由
分かりやすさの追求
聞き手は最初に最も重要な「結論」を知ることで、話の全体像や目的を瞬時に理解できます。これにより、その後の説明がスムーズに頭に入ってくるようになります。
納得感の向上
結論に至るまでの論理的な道筋が明確になるため、「なぜそう言えるのか」という疑問に対し、段階的に納得感を与えられます。
記憶への定着
整理された情報は、人間の脳が認識しやすいため、聞き手の記憶に残りやすくなります。
ピラミッドストラクチャーの主要な構成要素
ピラミッドストラクチャーは、大きく分けて以下の3つの要素で構成されます。
1. トップメッセージ(結論・主張)
最も伝えたいこと、つまり話のゴールです。簡潔かつ明確に提示します。
2. 主要メッセージ(根拠)
トップメッセージを直接支える、複数の論理的な理由や情報です。これらがトップメッセージの説得力を高めます。
3. 裏付けデータ・具体例
主要メッセージをさらに具体的に説明し、信頼性を高めるための詳細なデータ、事実、事例などです。
ピラミッドストラクチャーを支える2つの論理
ピラミッドストラクチャーの堅牢さは、以下の2つの論理的思考によって支えられています。
垂直方向の論理:Why So? So What?
上位のメッセージに対して「なぜそう言えるのか?(Why So?)」と問いかけ、その答えを下位のメッセージが提供します。逆に、下位のメッセージが「だからどうなるのか?(So What?)」という問いに答える形で、上位のメッセージを導き出します。
この上下のつながりが明確であることで、話の筋道が一本通り、論理の飛躍がなくなります。

水平方向の論理:MECE(ミーシー)
Mutually Exclusive and Collectively Exhaustiveの頭文字を取ったもので、「漏れなく、ダブりなく」という意味です。同じ階層に並ぶ複数の主要メッセージや根拠が、互いに重複せず、かつ全体を網羅している状態を指します。
MECEに考えることで、根拠の網羅性が高まり、聞き手に「これ以上他にないな」「抜け漏れがないな」という納得感を与えられます。

ピラミッドストラクチャーを作る4つのステップ
では、実際にピラミッドストラクチャーを使って主張を構築する具体的なステップを説明していきます。
1. 結論(主張)を明確にする
まずは、あなたが「最も伝えたいこと」を明確にします。これがピラミッドの頂点となるトップメッセージです。
ポイント
簡潔な一文で表現できるか。聞き手が「なるほど、つまりこういうことね」と理解できるか
2. 根拠を洗い出す
次に、その結論が「なぜそう言えるのか?」を支える全ての根拠や理由、関連するデータ、事実、具体例などを思いつく限り書き出します。この時点では、整理する必要はありません。
ポイント
量より質を意識せず、まずは可能な限り多くの情報を出す
3. 根拠をグループ化する(MECEを意識)
洗い出した根拠の中から、互いに関連性の高いものを集めてグループ化します。そして、それぞれのグループに適切な「タイトル(主要メッセージ)」を付けます。
ポイント
各グループのタイトルがトップメッセージを直接支えるものになっているか。複数のグループが「MECE(漏れなく、ダブりなく)」になっているかを確認
4. 結論と根拠のつながりを確認する(Why So? So What?)
最後に、作成したピラミッドストラクチャー全体を見渡し、論理的なつながりを確認します。
Why So?
トップメッセージに対して、各主要メッセージが「なぜそう言えるのか?」という問いに答えているか
So What?
各主要メッセージが、その下の裏付けデータや具体例から「だからどうなるのか?」と導き出されているか
このステップで、論理の飛躍や矛盾がないか、あるいはもっと分かりやすくできないかを再検討します。
ピラミッドストラクチャーを使いこなすためのヒント
ピラミッドストラクチャーは、一度学ぶだけでなく、繰り返し実践することで身につくスキルです。
日々の実践
会議での発言、メール作成、報告書の作成、さらには友人との会話など、あらゆるコミュニケーションで「結論から話す」「なぜそう言えるのか?」を意識してみましょう。
書き出す習慣
頭の中で考えるだけでなく、実際に紙やツールを使って図や箇条書きで書き出してみることで、論理の穴が見えやすくなります。
フィードバックの活用
作成したピラミッド構造を誰かに見てもらい、「分かりやすいか?」「納得できるか?」といったフィードバックをもらうことも有効です。
完璧を目指さない
最初から完璧なピラミッド構造を作るのは難しいかもしれません。まずは「結論と主な根拠」という骨格を作る練習から始め、徐々に精度を高めていきましょう。
まとめ
ロジカルシンキングは、現代社会で必須のビジネススキルであり、その力を最大限に引き出すのが「ピラミッドストラクチャー」です。結論から伝え、それを複数の根拠で論理的に支えるこのフレームワークを習得することで、あなたのコミュニケーションは劇的に改善し、相手を「なるほど」と納得させる説得力を手に入れることができます。
本記事でご紹介した4つのステップを参考に、今日からぜひピラミッドストラクチャーの構築に挑戦してみてください。